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2007年10月29日

スズメバチ 1999

 小学生のころ、校庭の桜の木の下にクロスズメバチの巣があった。名の通り黒っぽいしま模様で、キスズメバチよりもやや小ぶり。地中に巣を作る種類なので桜の根元をひっきりなしにハチが行き交う。虫好きだった僕は、つい近づきすぎて一匹のハチに手のひらを刺された。毒がきついのだろう。紫色に腫れ上がった手のひらは、一か月以上痛みがとれなかった。
 僕の中学校の特別校舎にはオオスズメバチがいた。例のうろこつきのバスケットボールが軒下にくっついている。田舎の子はハチの恐ろしさを知っているので、いたずらすることはなかったが、ある日、突然彼らが暴れだした。教室移動のために通路を歩いている生徒に十数匹が襲いかかったのだ。泣き叫びながら逃げてくる友だちを見たときは、ほんとうに驚いた。被害者の半分はその日のうちに入院し、学校は巣を焼き払った。幸いだれも死ななかったが、スズメバチの恐怖とはこんなものだ。
 僕はそのオオスズメバチと戦ったことがある。命がけの戦闘だ。十年ぐらい前のことだろうか。実家の物置にミツバチが住み着いていた。お盆を過ぎたころ、餌が足りなくなったのか、オオスズメバチが大挙してミツバチの巣にやってきた。彼らは、巣に戻ってくるハタラキバチを順番に捕まえて食ってしまい、殻だけになったミツバチの死体は巣の下に散らばる。
 そのことに気づいた僕は、季節外れのかっこうをして勝負に出た。弱肉強食の世界とはいえ、オオスズメバチの所行が許せなかったからだ。手に持った座敷用のほうきで飛んでくるオオスズメバチをはたき落とす。地面で体を震わせているハチをブーツの底で踏みにじり、次の敵へ。たくみにほうきをよけたハチは、エビそっくりの戦闘ポーズで僕の顔に飛びかかってくる。でも僕は彼らにひるむことなくほうきを振り回す。
 顔の前でどアップのハチがコンコン音を立てて僕のヘルメットにぶつかってきた。おそらく尻の針で思いきり刺しているつもりなのだろうが、フルフェイスの超硬シールドはびくともしないし、一メートル先を注視している僕にはそれがよく見えない。綿入りのジャンパーに防寒ズボン、マフラーにスキー用の手袋といういでたちの僕は、どこも刺される可能性がないので、まるでスーパーマンだ。そのうちに巣の周りのオオスズメバチは一匹もいなくなった。サウナ風呂を上回る蒸し暑さのおかげで何百グラムかはやせたかな。それを何日か繰り返して、僕は旅立った。
 旅から帰って愕然とした。たった数日でミツバチの巣の下は真っ黒。ハタラキバチの死体の山だ。おそらく全滅。とうとう巣の中に入り込んだオオスズメバチが蜜はもちろん幼虫やさなぎまで餌食にしていた。しつこく巣に出入りしている何匹かを殺したが、力が抜けてしまった僕はもうオオスズメバチにはかまわなくなった。彼らの巣を見つけて一匹残らず殺さない限り、ミツバチを守れないことが分かったからだ。
 次の年も、春になればミツバチはどこからともなくやってきたし、夏の終わりにはオオスズメバチが彼らを食いに来た。同じことは二年続いたが、三年目を最後にミツバチは二度とわが家に姿を見せなかった。



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